風を感じて 2016 1 1

 「止まるなよ」と、
ヘルメットのベルトを締めながら、
アキラは愛車に話しかける。
 市販車なのに、3000rpmから始まるタコメーターは、
不安定なアイドリングを全く表現しない。
 「7000rpmから9000rpmがパワーバンドだから、
3000rpm以下は、省略しても仕方ない」と思いつつ、
徐々に、いや繊細にアクセルを開けていく。
 コーナリング中は、ミシュラン・タイヤでも、
パワーをかければ、リアタイヤが滑り出す。
「だからこそ、繊細なアクセルワークが必要なのだ」と思う。
 セカンドギアに入れて、アクセルを開けば、
すぐに速度計は、時速80キロに達する。
 東北へ向かう高速道路への誘導路は、
あっという間に終わり、
本線を走っている車は、まるで止まっているように思える。
 「これでは、巡航速度は、4速か。
6段変速のギアは、公道では使いきれない」
 「イーグル・ドライバーになりたかった」とアキラは思う。
「F-15イーグル戦闘機は、こんな感じかな」
「でも、俺には無理だった」と思う。
 ベッドの上で寝ころびながら、漫画を読む癖があったアキラは、
急速に視力が悪くなってしまった。
 「それに、俺はドジだから」と思う。
峠道では、一回も転倒したことがないのに、
まさか直線で転倒してしまうとは。
 強力なディスクブレーキは、
本来ならば、右指1本か2本でコントロールしなければならないのに、
うっかり4本の指でブレーキレバーを握ってしまった。
 急制動に前輪のミシュラン・タイヤは耐え切れず、
ロックしてしまった。
アクセル以上にブレーキは繊細なコントロールが必要なのに・・・・・。
「だから、俺には戦闘機乗りは無理だったのだ」と、
アキラは自分を納得させる。
 限りなくレーサー仕様に近いバイクを乗り回して、
アキラは、自分を慰めるしかない。
「2015 MotoGP 年間ランキング」
1位 ロレンソ   ヤマハ
2位 ロッシ    ヤマハ
3位 マルケス   ホンダ
4位 ペドロサ   ホンダ
5位 イアンノーネ ドカティ
 これは、国内レースの結果ではありません。
2015年の世界のMotoGPの結果です。
 日本の工業製品は、多くの分野で新興国に追いつかれつつありますが、
オートバイにおいては、日本製品が圧倒しています。
 このようなオートバイにおいては、
小型化・軽量化が要求されるうえに、
技術の積み重ねが必要とされるので、
正に日本の得意とする分野でしょう。
「がんばれ、日本」























































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